パワヒのパワプロを語るブログ

現役選手を作ったりペナント検証したりチャンピオンシップの話をしたりするブログ

『引き分け』であればよかったなぁ~。というお話

 

 ――正直、調子は良くなかった。

 いや待って、これもしかして言い訳? 言い訳だなこれ。今日調子良かったです!!!!!!!!(クソデカボイス)

 

 ……本日、くやさんが主催する、

『第4回もうひとつの全国大会』

 の決勝トーナメントが行われました。

 一週間前の予選を2位で通過(ここ重要)し、セミファイナルもなんとか突破。正直負けたと思ってた(小声)

 そうして迎えた決勝トーナメント。1回戦も突破し、準決勝に進む。

 相手はあらき選手。2020プロリーグからの付き合いであり、おそらく人生で最も戦った相手。

 お互いにプレースタイルは分かり切っており、そうなれば繰り広げられるのは読み合いではなく、純粋な実力勝負。嘘です普通に読み合いしてました。

 

 2度目になるが、正直調子は悪かった。これは予選からであり、ずっとしっくりこない感覚でプレーしていた。

 そんな状態だったから、口では「試合楽しみ」と言っていたが、勝てる気がしなかった故の予防線だったのかもしれない。楽しみだったとは思うのだが、どちらかというと不安の方が強かった。そもそも大会の準決勝というのが不安の対象だし、調子が悪いのも不安の対象だし、相手があらき選手というのも不安の対象だし、何一つ良い要素はなかった気すらする。これもう負けだろ。

 そんな不安に呼応するかのように、1回の表に先制ホームランを打たれてしまった。相手の調子は良さそうだ。大して僕はゴミカス。

 

「これは負けだな…」

 

 そう微かに思ったのをよく覚えている。

 そんな暗い霧に包まれたような気分のまま、1回の裏に向かっていく。

(ダメかもな。もうあらき選手に勝てる日は来ないかもな)

 そこまで落ちていた。それほどまでに自信がなかった。

 ――1回の裏。自分でもビックリするくらいカーソルが吸い込まれて、スタンドへとボールを運んでいった。同点だった。この試合何度も見ることになる。同点になっていた。

 持ち手の気分を否定するかのように、カーソルの動きが精度を上げていく。

 調子は悪いと思っていた。それでも手はヒットを打つための動きを覚えていてくれた。

 あらきくんには勝てないと思っていた。それでも脳は戦うための道筋を覚えていてくれた。

 諦めていたのは気持ちだけで、自分の体のどこも諦めてなんていなかった。

 何度も何度も戦ったあらき選手を相手にしたからこそ、自らの感覚が蘇ったのだ。

 少しずつ、だんだんと投球や打撃が「いつも通り」に近づいていく。同点。同点。同点。

 そうして戦いを進めていくうち、「終わりたくない」と強く思った。それは敗退に恐怖する感情ではなく、この試合が終わらないでほしいという、永遠を望む想いだった。

 この試合に延長はない。同点だった場合は安打数で結果が決まる。勝とうが負けようが引き分けようが、どうしたって試合は終わってしまう。

 それが辛くて仕方なかった。こんなに心地いい試合をしているのに、どうして終わらなければいけないのか。なぜずっと試合をやらしてくれないのか。

 試合が続けばいいのに。幸せでも不幸でもないこの試合が。凄まじい喜びも深すぎる悲しみもないこの試合が。無いのだ。お互いの実力が拮抗しすぎて、喜びや悲しみに感情が振り切れてくれない。この試合が続いてほしかった。

 いつしか、最初に持っていた不安やしがらみは一切なくなっていた。あるのは相手に立ち向かうための発想と、終わりたくないという固執だけだった。

 同点。同点。試合が動いた。僕がホームランを打って、タイムリーを放った。

 見ている人からすれば、パワヒの勝利が確定した。そう見えたかもしれない。

 けど、そうは思えなかった。気持ちで負けていたわけではない。怯える気持ちもまったくなかった。それでも、このまま決まるとは思えなかった。

 最終回。ここを抑えれば決勝進出。

 2点差で、ランナー1塁。

 投手は三嶋投手で、打席には浅村選手が立っていた。

 

 ……あらき選手との対戦で、よく覚えていたことがある。2年前のプロリーグの数か月前にあらき選手と対峙した際、彼が僕からホームランを放ったのだ。

 最終回で、ハマスタで、

 僕が勝っていて、

 投手は三嶋投手で、バッターは浅村選手だった。

 その時みたいだな。と感慨を得た。

 投げたのはその日とは違う球だった。

 あのころとは何もかもが違っていた。憧れだった人は姿を消し、ライバルだと思っていた人はまるで勝てなくなって、パワプロで皆を沸かせることは出来なくなっていた。

 それでも――あの頃の僕も、今の僕も、きっとその場にいた。きっとあの頃のあらき選手も、今のあらき選手も、その場にいたのではないだろうか。

 ボールが吸い込まれる。ミットへと。ボールが吸い込まれる。スタンドへと。

 

 あらきの、同点ホームランだった。

 

 安打数で決着はついた。結果は、僕の負けだった。

 点数は同点だった。3-3で、同点。

 絶対に負けると思っていた。その通りになった。負けた。その事実に変わりはない。

 けれど試合前に想像していた負け方とは全く違った。いや、これは負けじゃない。

 結果は負けだ。紛れもない負けだ。でも、引き分けだと思いたい。

 負け惜しみだろうか。負けた悔しさを押し殺せてない、カッコ悪い感情だろうか。 

 きっと違う。負け惜しみではない。

 試合は終わった。この試合の続きはどこにもない。

 一つ謝っておきたいが、この考えはあらき選手へのリスペクトに欠けている。その点、本当に申し訳ないと思っている。あらき選手は間違いなく、全パワプロプレイヤー内で最強だ。

 その上で傲慢だが、あらき選手が、そしてあの試合を見ていた人たちが、あの試合は引き分けだと思ってくれたなら嬉しい。めちゃくちゃ自分勝手なことを言ってるとは分かってる! ほんとにこいつゴミ! それでも、そう思ってほしいと強く願いたい。

 

 もう一つ、リスペクトに欠けたことを書く。

 決勝トーナメントに入るまで、「安打数で決着は良くないでしょ…」と思っていた。けど、今では全く違う。安打数勝負で良かったと本当に思う。あの終わってほしくない試合が、同点という結果で終わってくれたことが、たまらなくありがたいのだ。試合中は嫌だと思っていたのに、終わってみればこんなにありがたいことはなかった。ほんとにリスペクトに欠けてるなオイ。

 

 ありがとうと。何度でも言いたい。

 トーナメントを用意してくれたくやさんにも、戦ってくれた皆さんにも、そして何より、永遠にも思える試合を繰り広げられたあらき選手にも。

 本当にありがとうございました。

 

 願わくば、またこんな対戦が出来る日を。